文ステシリーズが終わってしまうとのことなので、この話は残しておきたいなと思いました。今更需要があるかはわからないけど、観劇の記録ということで。
去る2020年の秋。
舞台「文豪ストレイドッグス」に沼っていた友人から、ショッピングセンターの隅で諭吉(一万円札)を握らされました。
「金出すから文ステの配信を観て」
強火のオタクはすぐに金を握らせるヤクザみたいな性質ありますよね。まあ私も軽度のキンプリ(KING OF PRISM)ヤクザだったんですけど。
ということで、当時2作同時上演を行なっていた舞台「文豪ストレイドッグス 序『探偵社設立秘話』『太宰治の入社試験』」の2本分の配信のお金を渡された私ですが、配信購入期限の認識をミスっていて『太宰治の入社試験』を購入できないという痛恨のミスを犯しました。後から別の配信でちゃんと観ましたけど。
そんなわけで、今回は当時友人にLINEで送りつけた『探偵社設立秘話』の感想がそこそこに長かったのでそちらを残しておこうと思います。
ちなみに私のその時点での文スト履修度は、アニメ1期・舞台初演(配信)・舞台『黒の時代』(配信)程度です。基本的な登場人物は分かるけど深いところまでは分かってない。黒の時代でめちゃくちゃ泣いた。黒の時代超おすすめ。いい芝居が見られる。dアニメストアで電車の中と風呂の中で観たけど外でみるものではなかった。泣きすぎて不審者だった。奇跡的にフライヤーを持っていたので、そちらをアイキャッチ画像にしました(紛らわしいことをするな)
それから演出・脚本の中屋敷さんが好きなので(学生時代には劇団の「柿喰う客」の舞台も観に行ってました)多分、自分と文ステの相性がいいんだと思う。あなたの中屋敷さんはどこから? 私は『贋作マクベス』から。
では以下、友人からの前情報では「子育て奮闘記」とだけ聞いていた『探偵社設立秘話』の感想です。
子育て奮闘記観ました。
このご時世ゆえにソーシャルディスタンスを保ちマウスシールドを装着、と対策する舞台がある中で、喋る人数を極限まで減らし、メインキャストと絡むアンサンブルのみマウスシールドをつけるスタイルは初めて見たので素直に驚いた。人との接触を出来る限り避けつつ、いかに臨場感ある舞台を作るかという創意工夫が伝わってきて好感が持てた。
また、乱歩役の長江がアンサンブルの台詞を全て喋ることで、乱歩はその状況や相手の考えが持ち前の超人的な推理力で全てわかっているというメタファーにもなっており演出としても上手く構成されていたと感じた。1時間半テンポよく喋り続けていたのは圧巻である。長江の台詞と同時にジェスチャーのみで演じるアンサンブルは、ダンス重視のメンバーなのだろう。台詞がない分、身体表現へ振り切ったメリハリのある配置である。
対して、一人己の台詞を喋りモノローグが多い福沢諭吉は思っていたよりも人間臭く見え、演出も相まってひとりで生きてきたことが伝わる。
また、織田作之助の過去が垣間見えることで「黒の時代」へと繋がることを理解した。織田作の声の出演はアニメが中島敦役の上村祐翔だったのにあわせてか、舞台版中島敦役の鳥越となっていた。俗的な感想を述べると、人の心がない(褒めている)一方でどこか重なる部分が彼らにはあるのだろう(原作読んでないので知らぬがきっとそうであると楽しい)
福沢と乱歩の出会いは完全な成り行きであったものの、ラストには双方すっかり親子の顔になっていた。福沢があらゆる意味で独り身から親となり教え導くことを決意し、乱歩が正しく子供として扱われ子供らしくなれた瞬間である。これが冒頭の「子育ての記録」という台詞に繋がり納得だ。
舞台のシリーズを観た限りでは、この作品は年長者が下の者を気にかける場面が多々見受けられる。その関係性は様々だが、どれも情に溢れている。これが”異能力バトル”である以外の作品の深みの部分なのだろう。
そしてラストのアニメ1期OPへと繋がるエンディングだ。初演時も思ったが、各キャラクターの印象的な場面を切り取ったまさにアニメのオープニングのような演出でキャラクターたちが紹介されていくのが気持ち良い(個人的には大変好みである。ありがとう。)
終演後、本来300席ほどあるあうるすぽっとにパラパラとまばらな拍手が響いていた。座席間隔を空けるため、座席が間引きされ定員の半分以下の観客しかいないためだ。会場ではフェイスシールドが配布されたようだが、確かに唾が飛び散る様を観て良しとする人間はいないだろう。これまではそれが当たり前だと思っていたはずが、自分もそこに少しでも不快感を覚えてしまい自分の感覚の変容にも驚いた。(それでも現場に行きたい)
一日でも早く、物理的な距離など気にせず割れんばかりの拍手が響く劇場へ戻れることを願うばかりである。
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
私は文スト自体を熱心に追いかけているわけではないので詳しいわけではないし、文ステは配信でしか鑑賞したことがないけれど、熱量が毎回すごくてまだ観たことがない人には観てほしい良質な作品だなと思っています。
何か鑑賞のきっかけになれば幸いです。
演劇はいいぞ!!
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